紀元前4000年頃、メソポタミア地方で鋳物が生まれたと言われています。はじめは開放型といい、石を彫りその溝に溶融した金属を流し込むという簡単なものではありましたが、次第に2枚の型を合わせる合わせ型、中子の入った中空の型、蝋で原型を作る蝋型技法などが発達していくと、複雑な鋳物を作ることが可能になってきました。金属の種類として、銅に錫を加えた青銅(ブロンズ)は、鉄などに比べ、腐食しにくく、柔らかく加工しやすい為、鍋や壺、祭器など日用生活品として幅広く使用されるようになりました。

 わが国では、鋳物が生まれたというより、紀元前300年弥生時代のはじめ頃に、中国や朝鮮の渡来人によって、突然高度な鋳造技術による青銅器などが持ち込まれ、その後紀元前100年頃より形状の簡単な刀剣類や装飾品を鋳造したのがわが国の鋳造の始まりと言えるでしょう。

 鋳造とは金属(金・銀・銅・真鍮・鉄など)を溶融して液体にし、鋳型に流し込み冷却して所要の形にする金属の加工方法のことで、その鋳造技術によって生まれた製品のことを鋳物と呼びます。他の金属加工法として、圧延・鍛造・切削などの技術もありますが、鋳造の利点として、創作する立場にとってとても重要である、いかなる形状にも自由に加工が出来るという点において、優れた加工技術といえると思います。
今だに私たちの属する美術業界のみならず、工業業界においても、その魅力は衰えることなく、更なる鋳造技術の発達により、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしていると思えます。
彫刻を表現する上においても、素材をよく理解するということは非常に重要なことで、金属のもつ独特の風合い、きめの細やかな艶、重厚さなどの美しさを生かすことでより創作の幅が広がることもあると思います。

 鋳物は作品の大きさにもよりますが、僅か5mm足らずの決して覗くことの出来ない未知なる空を満する事で生まれてきます。 炉内で溶融された金属表面は鏡面のような艶やかな、ゆったりとした静を感じさせますが、鋳型に流れ込む瞬間は一転し、力強い動なる力を目にすることが出来ます。
この瞬間は、鋳物師として、他力である溶融された湯の持つエネルギーに力を委ねる一瞬ともいえます。 故に、気の張りつめる静粛な鋳込とは意を込める瞬間とも言い表わせる気がします。
金属も母体である鋳型の中を占領するのではなく、共有する事でそのエネルギーを保持し、鋳物として生まれてくることができるのです。自然界のさまざまな事物は共有してこそ力を保ち、また活かすことが出来るのだと思います。知恵や勘を必要とする職人の仕事において、自然界から教わることは計り知れぬほど大きいと思います。

 鋳物が生まれて6000年、先人たちの遺産ともいえる鋳物を後世に伝えていくという義務を鋳物師として自負していかなければならないと思っております。