弊社では焼型法を扱っており、焼型とは鋳型を作製した後、800~900度で焼成し、まだ鋳型の熱いうちに湯を流し込む鋳造技法のことを指します。惣型法はそれに比べ複雑な作品を作ることが困難で、大まかに2つに鋳型を分けられる作品を鋳造するのに適しており、焼型法は作業工程が多く時間を要しますが、複雑な作品を鋳造するのにも適しているという為、実際、美術鋳物を携わる現場においては、真土型鋳造=焼型法という認識が強いようです。
弊社が扱っている焼型法は我が国において、古くから伝わる伝統的な技法で気候風土にも良く合う鋳造技術の1つに上げられます。

 焼型法で鋳上がった作品の鋳肌は、保温力のある焼きしまった真土型にまだ熱いうちに、鋳込むことで独特の引き締まった鋳肌の中に艶やかなな滑らかさや、どこか温かみのある風合いに仕上がるのが特徴といえます。この鋳肌を生かす為には、熟練した仕上げ職人のタガネによる手仕上げにより、美しい鋳肌を持つ作品に仕上がるのです。
近代日本を代表する彫刻家といえる、荻原守衛、高村光太郎、石井鶴三などもこの焼型法により、数多くの作品を残しております。

 もう1つ魅力として挙げられるのが、原型を鋳造作品に置き換えた際の歪み、縮みが非常に少なく、国宝や重要文化財の復元・保存にも、焼型鋳造の技術が必要不可欠であるといえ、東京国立博物館所蔵の薬師寺聖観音像、法隆寺夢違観音像、東大寺誕生仏像など重厚さのなかに艶やかさを合わせ持つ凛とした姿は国の宝として後世に伝えられるべき美しい仕上がりであるといえます。

 現在、多様な分野にわたり環境問題が問われているなかで、この焼型法は産業廃棄物排出が少なく地球環境に優しいエコロジカルなシステムといえます。しかしながら、多くの複雑な工程により成し得る焼型法は、環境の厳しい職人社会の中で継承されていく技術だけに、近年、数えるほどしか後継者がいないという現状にあります。多様な物がオートメーション化される社会において、体得するまでに非常に長い年月を費やす手仕事による職人の伝統技術を継承していくことは、決して易しいとはいえない時代であると思えます。
そのような時代の中で、より洗練された職人技術を継承していく為には、日々の生活環境のあらゆる事物において、常に謙虚な姿勢を保ち、本物を追い求めていくことで、何千年も続く日本文化の伝統を築いていけると思っております。

真土型プロセス

《石膏原型》鹿野幸子作『こぼれる花』H174cm

  • ① 主型の製作