ブロンズ彫刻は設置されている場所、環境、風土によりさまざまな変化が現れ、室内、屋外では大きな違いが出てきます。

 着色に関しますと、気候などにより環境条件が急激に変化することが少ない室内は、緩やかな速度で着色に深みが加わり、自然に落ち着きが表れ、作品を管理しやすい環境にあります。
それに反し、気象条件や風雨を屋根や壁により遮る事のできない野外に設置されている作品は、紫外線や排気ガスによる色あせや変色、酸性雨による雨だれ、動物の糞尿や植物の樹液による汚れなど、ブロンズ作品を管理していく中で多くの問題に悩まされます。
その問題は室内のそれと違い、深みや落ち着きというより風化や汚れのように目に映ってしまいます。
 着色の修繕の基本理念としては、雨だれや汚れなど汚らしさとして目に映るものは除去し、長い年月をかけ自然に発色した美しい色彩は生かし、調和の取れた仕上がりにすることを心掛けております。  修復においては、屋外に設置した事例として次のような問題が挙げられます。
特に寒冷地ではブロンズの内部(ブロンズ作品は空洞の為)に結露した水が年月を経て少しずつ溜り、結氷した際の内側からの圧力でブロンズに亀裂を及ぼすことがあります。
また、何かの衝撃を受け作品表面が陥没したり、作品細部の欠落などさまざまな不可抗力により破損することも少なくないと思います。
 上記のような場合、亀裂、陥没、破損を生じた箇所を修繕し、結露結氷防止として、結露した水をブロンズの作品内部より外に流れ出るようにする排出口を設けるなどの対策が必要になります。

 このような過酷な屋外の環境の中で、作品を手放しで管理することは大変難しことで、それには定期的に作品をメンテナンスをすることで、より美しい状態を恒久的に保つことができると思っております。
小さな作品や手の届く場所に設置されている作品であれば、水洗いや乾拭きをするだけで全く放置されている作品に比べ、綺麗な状態を保つことができますが、特に高所に設置されている作品、数メートルに及ぶ大作等、所有者の方ではなかなか簡単に面倒を見てあげることのできない場合も多いと思います。
着色の剥がれ具合、ブロンズ表面の状態、設置されている環境、設置年数により、メンテナンスの作業工程や表面処理は変わってまいります。
どうぞお気軽にご相談くださいませ。

色直し例

帰門  (460 x 260 x 80) (株)クロタニコーポレーション 鋳造 神奈川県長延寺蔵

  • 修復前(正面):気候の条件により全体に苔が発生しており、ところどころ緑青がふいてきている。雨だれやコーティングの剥離箇所が目立つ。

無何有II  (194 x 96 x 20 194 x 96 x 18) (株)クロタニコーポレーション鋳造 神奈川県長延寺蔵

  • 修復前(正面):特に雨だれが目立つが、深みのある緑青の紋が自然にふいてきている。

ジオ・ポモドーロ作品 神奈川県長延寺蔵

  • 修復前(全体)