蝋型鋳造法は幾つか技法があり、日本古来から仏像をなどを鋳造する技法として、先に中子を作り表面に蝋を貼り蝋原型を作り、その肌に真土をつけ鋳型を作る技法、イタリアで発達した石膏を鋳型として使用する石膏鋳造法、アメリカの工業鋳物の発展系ともいえるセラミックモールド法などがあります。
真土を込める技法は現在、鋳金家、工芸家の中で行っている方もおりますが、美術鋳造という分野の中では、大別すると後者の石膏鋳型、セラミック鋳型で鋳造しているのが現状のようです。しかしながら、小規模の鋳造所では、1点ものの作品をセラミックモールド法で鋳造することは、鋳型材の管理や焼成釜の問題など、コスト面の上でもなかなか困難な為、石膏鋳造で鋳造しているところが多いようで、逆に大規模な鋳造所ではセラミックモールド法で鋳造しているところもあるようです。

 弊社では、イタリア式蝋型石膏鋳造を扱っております。

蝋型鋳造の魅力として、まず言えることが、材料である蝋の持つ特質にあると思います。粘着力があり、柔軟かつ展延性に富んでいる蝋を使うことで、粘土や石膏では表現しきれなかった、動きやタッチ、ニュアンスを現せることは作家にとって、作品の表現方法の可能性も広がり大変貴重な素材であると思います。
一般的に作家は原型を粘土で作り、石膏におこし、鋳物師が作品を蝋原型に置きかえます。その後、作家の方に来ていただき蝋によって作品の再修正や付け加えをし、再び鋳物師の手に渡り、鋳造作品に仕上げられます。作品の形状にもよりますが、雌型の材質として古くはゼラチン、石膏を使用していましたが、現在、シリコンという便利な素材がある為、原型は木、石、テラコッタ、樹脂、粘土など石膏以外の作品も1度雌型にとれば、鋳造作品にすることができます。
作家が蝋の修正をする際に、鋳物師にその作品のなかで大切にしているところや、重要なニュアンスを伝えることができることで、作品がより作家の描いているイメージに近づける点も蝋型鋳造の魅力の一つといえるところかもしれません。仕上がりも蝋の持つ特性を更に生かす為、酸化皮膜のついたままの鋳肌をブラシで除去するか、もしくは酸をかけ独特の鋳肌の風合いを残したりする技法も蝋型鋳造ならではの表現方法といえるでしょう。
この表現方法は、イタリアの彫刻家、マリーニ、マンズーをはじめ、このような鋳ばなしで残している作品も数多くあり、マットな乾いた感じの中に伸びやかな切れのある繊細な鋳肌は、日本でも馴染みのある鋳造作品表現の1つといえることでしょう。勿論、仕上げをした後、着色することも可能であり、作家と作品に対して多くのコミュニケーションをとることで作品自体の仕上がり具合もおのずと変わってきます。

このように鋳造作品を作家との共同制作として、作品製作現場に携われることは、私たち鋳物師の誇りであり、喜びであるといえます。

蝋型プロセス

津田 裕子 作『含羞』H50cm

  • ① 雌型(シリコン型)の製作